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宅建のクーリングオフ|できない場所と8日の数え方

宅建業法

たとえば週末、駅前の空き地に張られたテントの案内所に寄り、その場の雰囲気でマンションを申し込んだとします。家に帰って冷静になったら、ローンが怖くなりました。このとき、あとからやめられるでしょうか。

答えは、売主が宅建業者なら、やめられます。宅建のクーリングオフは、業者が売主の物件を事務所など以外で申し込んだ買主が、8日のうちなら書面で、理由を言わずに違約金なしでやめられる決まりです。8日は、業者から書面で告げられた日から数えます。

試験で迷いやすいのは、どこで申込みをしたかと、だれがその場所を言い出したかの2点です。ここは、買主が落ち着いて決められた場所かどうかで考えると、丸暗記しなくても解けます。あとは、8日・書面・出したら効く・引渡しと全額払いでおしまい、の4つを覚えます。

宅建のクーリングオフとは?訪問販売との違いは?

宅建業法のクーリング・オフは、買主が、物件の申込みや売買契約を一方的にやめられる決まりです。法律では「申込みの撤回等」と呼びます。契約の前なら申込みの撤回(申込みを取り下げること)、契約の後なら契約の解除ができます。

理由は要りません。家に帰って冷静になったらローンが怖くなった、という理由でもやめられます。売主の宅建業者は、損害賠償や違約金(約束を破ったときのペナルティのお金)を請求できません。

なぜこんな決まりがあるのでしょうか。宅建業者は何度も売買をしているプロで、買主の多くはプロではありません。業者の事務所以外の場所で熱心に勧められると、その場の空気にのまれて申し込んでしまいがちです。そこで、頭を冷やして考え直す時間を買主に与えます。英語の cooling off(頭を冷やす)が名前の由来です。

身近なところでは、訪問販売やネット通販のルール(特定商取引法)があります。自宅に来た訪問販売で高い浄水器を断れずに買ってしまっても、クーリング・オフができます。一方、ネット通販で買った服がイメージと違っても、法律上のクーリング・オフはありません。

宅建業法訪問販売ネット通販
対象業者が自ら売主の
宅地・建物の売買
自宅などで勧められた
商品・サービス
ウェブサイトなどでの
通信販売
クーリング・オフあるあるない
期間書面で告げられた日
から8日
法律で決まった書面を
受け取った日から8日
返品の表示がなければ
受け取った日から8日は返品可
(返送の費用は買う人)
やめる方法書面だけ
(電子メールは不可)
書面か
電子メールなど
お店が表示した
返品のルールによる

宅建業者が行う宅地・建物の取引は、特定商取引法の対象から外れています。家を買うときは、宅建業法のクーリング・オフを使います。8日という期間や、違約金を請求できない点は訪問販売と同じです。違うのはやり方で、宅建業法は書面だけです。

クーリングオフが使えるのはどんな取引?

使えるのは、宅建業者が自ら売主になり、宅建業者ではない買主と結ぶ、宅地・建物の売買です。

これは、業者が自ら売主になるときの8つのルール(8種制限)の1つです。8種制限の全体は、8種制限とは?自ら売主制限の8つと数字・他人物売買で整理しています。プロではない買主を守るための決まりなので、守る必要がない取引には使えません。

まず、買主も宅建業者なら使えません。8種制限は、業者どうしの取引には適用されないからです。次に、個人のAさんが持ち家を売り、業者が仲介(媒介)するだけの取引にも使えません。売主が業者ではないからです。部屋を借りる賃貸の契約も、売買ではないので対象外です。

試験の問題文では、まず売主が宅建業者か、買主が宅建業者ではないかの2つを確かめます。

クーリングオフできない場所はどこ?

買主が事務所等で申込みをしたときは、クーリング・オフができません。事務所等とは、業者の事務所のほか、決まりで挙げられたいくつかの場所をまとめた呼び方です。事務所等以外の場所で申し込んだなら、クーリング・オフができます。

見分けるときは、買主が落ち着いて決められる場所かどうかで考えると覚えやすいです。

クーリング・オフできない
  • 売主の業者の事務所
  • 建物の中の案内所専任の宅建士を置くもの
  • 建物の中の展示会場など専任の宅建士を置くもの
  • 売主から頼まれた業者の事務所代理・媒介の業者
  • 買主が申し出た自宅・勤務先
クーリング・オフできる
  • テント張りの案内所
  • 喫茶店・レストラン買主が指定してもできる
  • 業者が申し出た自宅・勤務先
  • 関係のない業者の事務所・銀行

売主の事務所には、本店・支店のほか、ふだんから続けて営業に使う施設で、専任の宅建士を置くものも入ります。図の建物の中とは、法律では「土地に定着する建物」の中のことです。土地に定着する建物とは、テントのような仮のものではない、ふつうの建物のことです。モデルルームとテント張りの案内所は、どちらも分譲の案内所です。違いは、ふつうの建物の中にあるかどうかです。代理(売主に代わって契約まで行うこと)や媒介を頼まれた業者の事務所も、売主の事務所と同じ扱いです。その業者が建物の中に設けた、専任の宅建士を置く案内所も含みます。喫茶店やレストランと同じく、ホテルのロビーで申し込んだときも、クーリング・オフができます。専任の宅建士を置く案内所の決まりは、事務所・案内所等で解説しています。

申込みと契約の場所が違うときは?

申込みをした場所と、契約を結んだ場所が違うときは、申込みをした場所で決めます。

たとえば、テント張りの案内所で申込みをして、翌日に業者の事務所で契約したとします。契約は事務所でも、申込みがテントなので、クーリング・オフができます。

逆に、業者の事務所で申込みをして、後日、近くの喫茶店で契約したとします。この場合は事務所で申し込んでいるので、クーリング・オフはできません。

自宅・勤務先は、だれが申し出たかで決まる?

買主の自宅と勤務先は、だれがその場所を言い出したかで結論が逆になります。

たとえば、買主から「子どもが小さいので、自宅で説明してください」と頼み、自宅で申し込んだとします。この場合はクーリング・オフができません。自分で選んだ場所なので、落ち着いて決められたと考えます。

反対に、業者から「ご自宅に伺います」と言い出して、自宅で申し込んだならクーリング・オフができます。訪問販売と同じで、断りにくい場面だからです。

注意したいのが喫茶店です。買主から「駅前の喫茶店で話を聞きたい」と指定し、そこで申込書に名前を書いても、クーリング・オフができます。喫茶店やテントは、買主が自分で選んでも、その場の雰囲気で申し込みやすい場所だと考えると覚えやすいです。決まりでも、買主が申し出たらできなくなる場所は、自宅と勤務先の2つだけです。

クーリングオフの8日はいつから数える?

期間は、業者から、クーリング・オフができることとその方法を、書面で告げられた日から数えて8日です。

告げられた日を1日目として数えます。たとえば10月1日に書面で告げられたら、10月8日が最終日です。10月9日になると、8日が過ぎたのでクーリング・オフはできません。

1告げられた日
2
3
4
5
6
7
8最終日
9できない
10

8日が始まるのは、業者が書面を渡して告げたときです。口頭で「8日はクーリング・オフできますよ」と言っただけでは、期間は始まりません。電子メールなどで告げることもできません。35条書面や37条書面は、相手の承諾があれば電子データで渡せますが、ここは紙の書面だけです。

実は、業者に告げる義務はありません。ただ、告げなければ8日の期間が始まらないので、買主はクーリング・オフできる状態が続きます。それが終わるのは、引渡しを受けて代金を全部払ったときです(あとの節で説明します)。

クーリングオフはどうやってする?

クーリング・オフは書面で行います。電話や口頭で「やっぱりやめます」と伝えても、クーリング・オフにはなりません。試験では「電磁的方法でクーリング・オフできる」というひっかけが出ますが、電子メールなども使えません。

効力が生じる(やめたことになる)のは、買主がその書面を出した(発した)時です。業者に届いた時ではありません。

たとえば10月1日に書面で告げられた買主が、最終日の10月8日に郵便で書面を出したとします。業者に届いたのが10月10日でも、8日目のうちに出しているので、クーリング・オフは有効です。結果として、郵便が届くまでの日数で買主が不利になりません。

クーリングオフできなくなるのはどんなとき?

できなくなるのは、次のどちらかになったときです。1つは、書面で告げられた日から8日が過ぎたとき。もう1つは、宅地・建物の引渡しを受け、かつ、代金の全部を支払ったときです。

鍵を受け取って引渡しが終わり、代金も全部払えば、取引は終わっています。大事なのは、両方がそろったときだけという点です。

引渡しを受けたかつ代金を全部払った=できない
引渡しを受けたかつ代金の一部が残っている=まだできる

たとえば、家の引渡しは受けたけれど、残りの代金をまだ払っていないなら、クーリング・オフができます。代金は全部払ったけれど、まだ引渡しを受けていないときも、クーリング・オフができます。

クーリングオフしたらお金はどうなる?

クーリング・オフをされた業者は、申込みや契約のときに受け取った手付金などのお金を、速やかに全額返さなければなりません。

たとえば、申込みのときに手付金100万円を払っていたら、100万円がそのまま戻ってきます。業者は、損害賠償や違約金を請求できません。違約金として20万円を差し引いて返す、といったこともできません。

クーリング・オフの決まりに反する特約で、買主に不利なものは無効です。たとえば「買主はクーリング・オフをしない」「書面が業者に届いた時に効力が生じる」「手付金は返さない」という特約です。買主が納得して契約書にサインしていても、無効になります。

反対に、買主に有利な特約は有効です。たとえば、クーリング・オフできる期間を、書面で告げられた日から14日に延ばす特約です。

告げる書面には何を書く?

業者が渡す告げる書面に書くのは、この記事で見たルールそのものです。8日のうちは、引渡しを受け、かつ代金を全部払った場合を除き、書面でクーリング・オフできること。業者は損害賠償や違約金を請求できないこと。書面を出した時にやめたことになること。受け取った手付金などは速やかに全額返すこと。このほか、買主の氏名・住所と、売主の業者の商号・住所・免許証番号を書きます。

覚えるのは、仲介した業者のことは書かなくてよい、宅建士の記名も要らない、の2点です。

宅建試験でクーリングオフはどう出る?

2015〜2025年の13回分の宅建業法の問題(260問)を分析しました。クーリング・オフを主なテーマにした問題は11問で、13回のうち11回で1問ずつ出ています。残りの2015年と2017年も、自ら売主制限の問題の選択肢にクーリング・オフが入っていました。宅建業法とは?何問出る?分野の出題数と勉強法の中でも、毎回のように問われる分野です。

11問のうち、受験予備校が公表した正答率は、80%以上が5問、60〜80%が4問、60%未満が2問でした。場所の問題は、正答率80%以上がほとんどです。選択肢の数で見ると、できない場所が18肢です。期間・方法・できなくなるとき・特約が18肢、告げる書面とお金(返還・違約金)が17肢です。3つとも13回のうち10回出ています。

問題は「宅建業者Aが自ら売主として、宅建業者ではないBと…」という事例の形で出ます。2025年の問題は、4つの選択肢のうち3つが2018年の問題とほぼ同じ文でした。次の4つのひっかけは、形を変えてくり返し出ています。

よく出るひっかけ
  1. 契約をした場所で判断する申込みの場所で判断する
  2. 買主が指定した喫茶店は不可喫茶店ならだれが選んでも可
  3. 書面が届いた時に効力が生じる書面を出した時に効力が生じる
  4. 引渡し又は代金全部で終わり引渡しかつ代金全部で終わり

勉強するときは、次の順番で押さえましょう。

  1. 申込みの場所と、だれが言い出したか
  2. 8日の数え方とやり方
  3. できなくなるとき
  4. お金・特約と、業者どうしの取引

例題

Q1宅建業者Aが自ら売主として、宅建業者ではないBと宅地の売買契約を締結した。Bが自ら指定した喫茶店で買受けの申込みをし、翌日にAの事務所で売買契約を締結した場合、Bはクーリング・オフにより契約を解除することができる。

Q2宅建業者Aが自ら売主として、宅建業者ではないBと建物の売買契約を締結した。Bの申出によりBの勤務先で説明を受け、そこで買受けの申込みと契約の締結をした場合、Bはクーリング・オフにより契約を解除することができる。

Q3宅建業者Aが自ら売主として、宅建業者ではないBと建物の売買契約を締結した。Aの申出によりBの自宅で説明を受け、そこで買受けの申込みと契約の締結をした場合、Bはクーリング・オフにより契約を解除することができる。

Q4宅建業者Aが自ら売主として、宅建業者ではないBと、喫茶店で宅地の売買契約を締結した。Bは、クーリング・オフについて書面で告げられた日から数えて8日目に契約を解除する旨の書面を発送し、その書面は10日目にAに到達した。この場合、契約の解除は有効である。

Q5宅建業者Aが自ら売主として、宅建業者ではないBと、喫茶店で宅地の売買契約を締結した。Bは、クーリング・オフについて書面で告げられた日から5日目に宅地の引渡しを受けた。この場合、代金の一部が未払いであっても、Bはクーリング・オフにより契約を解除することができなくなる。

Q6宅建業者Aが自ら売主として、宅建業者ではないBと、喫茶店で建物の売買契約を締結した。契約にクーリング・オフをしない旨の特約を定めた場合、Bがその特約に同意していれば、特約は有効である。

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改正反映日
2026年10月23日
法令の基準日
2026年4月1日
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