8種制限とは?自ら売主制限の8つと数字・他人物売買

モデルルームで新築マンションを買い、まだ建っていないのに手付金として数百万円を払ったあとで、もしその不動産会社が倒産したらお金はどうなるでしょうか。こうした場面で買主を守るのが、宅建業法の8種制限(自ら売主制限)です。
8種制限は、宅建業者が自ら売主になり、宅建業者でない人が買主になるときだけかかる、買主を守る8つの決まりです。業者どうしの取引には全部かからず、仲介(媒介)や代理をするだけの業者にもかかりません。試験では、まずこの取引に8種制限がかかるかを見分け、次に手付金等の保全措置・手付・損害賠償の予定・契約不適合の特約の4つの数字と、違反した特約がどうなるかを問われます。
8種制限(自ら売主制限)とは?
8種制限とは、宅建業者が自分の物件を自分で売る「自ら売主」となるときに、業者にかけられる8つの制限のことです。他人の売買の間に入る仲介(媒介)や代理ではなく、業者自身が売主として売買契約を結ぶ場面の決まりなので、自ら売主制限とも呼ばれます。
なぜこのような決まりがあるのかというと、売主が不動産のプロである業者で、買主が一般の人のとき、契約の知識や物件の情報量で、買主は業者にかなわないからです。たとえば業者が作った契約書に「欠陥があっても売主は責任を負わない」「違約金は代金の30%」と小さく書かれていたら、家の買い方に慣れていない買主は気づかずにサインしてしまいます。また、大きなお金を払ったあとに業者が倒産することもあります。そこで法律で上限や禁止事項を決め、業者が買主に不利な条件を押しつけられないようにしています。
8種制限には、次の8つの決まりがあります。札の下の小さな文字が、試験に出る数字と要点です。色の付いた4つは、数字がよく問われる決まりです。
8種制限はどんなときにかかる?業者間取引では?
8種制限がかかるのは、売主が宅建業者(自ら売主)で、かつ買主が宅建業者でないときだけです。
フリマアプリで個人から物を買うのと、お店から買うのとでは、買う人の守られ方が違います。宅建業法の8種制限も同じで、守られるのはプロ(業者)から買う素人(業者でない人)だけです。買主も宅建業者なら(業者間取引)、お互いに不動産のプロなので、法律が間に入って守る必要がありません。たとえば業者間取引なら、代金の2割を超える手付や違約金を決めてもよく、手付金等の保全措置をとらずに手付金を受け取ることも、他人の物件を売ることも、クーリング・オフを認めないこともできます。
また、売主が業者でなく買主が業者のときも、売主が業者でないので8種制限はかかりません。売買の媒介(仲介)や代理をする業者にも、8種制限はかかりません。売主が業者で買主が業者でない取引を別の業者が媒介するときは、売主の業者にだけ8種制限がかかります。
手付の額の制限とは?2割を超えるとどうなる?
業者が自ら売主となるときは、代金の2割(10分の2)を超える手付を受け取ってはいけません。買主が納得して承諾していても、2割を超える手付は受け取れません。たとえば代金3,000万円の建売住宅を買うなら、業者が受け取れる手付金は2割の600万円までです。
また、業者が受け取った手付は、契約書に「証約手付」「違約手付」などどんな名目で書かれていても、法律で自動的に解約手付になります。解約手付とは、手付金を使って契約を後からやめられる手付のことです。相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は払った手付を放棄(あきらめること)して、売主の業者は受け取った手付の倍額を現実に提供して、契約を解除できます。相手方が履行に着手した後は、もう手付による解除はできません。自分が着手していても、相手方がまだ着手していなければ解除できます。
この決まりより買主に不利な特約は無効です。たとえば「売主は受け取った手付を返すだけで解除できる」「買主は手付のほかに違約金も払わないと解除できない」「手付による解除は一切できない」という特約は無効になります。反対に、「売主が解除するには手付の3倍を払う」といった買主に有利な特約は有効です。
手付金等の保全措置とは?保全措置が要らない額は?
手付金等の保全措置とは、買主が物件の引渡しを受ける前に払ったお金を、業者が倒産などで返せなくなっても買主の手元に戻るように、銀行や保険会社などで守っておく仕組みです。クーリング・オフを除くと、8種制限のなかで試験にいちばんよく出ます。
ここで守る対象になる「手付金等」とは、代金に充てるお金のうち、契約を結んだ日以後、引渡しの前に払われるものです。契約のときに払う手付金だけでなく、引渡し前に払う中間金などもすべて入ります。業者は、手付金等を受け取る前に保全措置をとらなければなりません。「受け取った後、速やかにとればよい」というひっかけがよく出ますが誤りです。業者が保全措置をとらないときは、買主は手付金等を払わなくてよい(支払いを拒める)と決まっています。
ただし、受け取る手付金等の合計額(すでに受け取った分を含む)が次の範囲に収まるなら、保全措置は要りません。
②保険事業者の
②保険事業者の
③指定保管機関の
保全措置が要らないのは、手付金等の合計が未完成物件なら代金の5%以下、完成物件なら代金の10%以下で、かつ1,000万円以下のときです。未完成物件は工事の完了前の物件、完成物件は工事の完了後の物件のことです。割合と1,000万円のどちらか一方でも超えたら、受け取る前に保全措置が要ります。未完成物件の基準が小さいのは、建物がまだなく、完成前に会社が倒産すると買主が困るからです。
また、買主への所有権移転の登記がされたときや、買主が所有権の登記をしたときは、金額にかかわらず保全措置は要りません。もう物件が買主のものになっているからです。
具体的な数字で見てみましょう。
②がよく出る形です。手付金だけなら保全措置が要らなくても、中間金を足して基準を超えたら、その時点で手付金の分も含めた全額を守る必要があります。
未完成か完成かは、売買契約を結ぶときの状態で判断します。工事の完了とは、外観だけでなく内装工事なども終わって住める状態のことです。契約のときに未完成だったなら、途中で建物が完成した後に中間金を受け取るときでも、未完成物件の5%を基準にします。
保全措置の方法は、未完成物件では銀行などによる保証と、保険事業者による保証保険の2つだけです。完成物件では、この2つに加えて指定保管機関による保管も使えます。未完成物件では保管は使えません。保証や保険の期間は少なくとも物件の引渡しまで必要で、「工事の完了まででよい」は誤りです。保証書や保険証券は買主に渡しますが、買主の承諾があれば電子データ(電磁的方法)で渡すこともできます。
なお、業者が自ら売主のときは、契約の前に行う重要事項説明(35条書面)でも、手付金等の保全措置の概要を買主に説明します。重要事項説明で何を説明するかは重要事項説明(35条書面)とは?宅建の4つの決まりと記載事項で詳しく確認できます。
損害賠償額の予定・違約金はいくらまで?
買主や売主が契約の約束を破ったとき(債務不履行による解除)に、いくら払うかを前もって契約で決めておくのが、損害賠償額の予定と違約金です。たとえばリフォーム済みの中古マンションを買う契約書で、不当に高い違約金が決められていたら買主が困るため、上限が決まっています。
業者が自ら売主の売買では、損害賠償額の予定と違約金を合わせて代金の2割(10分の2)を超える定めをしてはいけません。別々に2割ずつではなく、2つの合計で2割までです。もし2割を超える定めをしたときは、2割を超える部分だけが無効になります。契約の全部が無効になって0円になるわけではありません。たとえば代金3,000万円の物件で「違約金は900万円とする」と定めたら、2割の600万円を超える300万円の部分だけが無効になり、600万円の限度で有効になります。
一方、契約で損害賠償額の予定や違約金を定めていないときは、この2割の制限はありません。買主が契約を破ったら、業者は実際に生じた損害を証明して請求でき、その額は代金の2割に限られません。
契約不適合責任の特約はどこまで有効?
引き渡した家に雨漏りやシロアリの被害があるなど、物件が契約の内容に合っていないときに売主が負う責任を「契約不適合責任」(宅建業法の言葉では担保責任)といいます。買主は売主に対して、修理(追完)・代金の減額・損害賠償・契約の解除を求められます。
まず民法の原則では、種類・品質の不適合は、買主が不適合を知った時から1年以内に売主に通知しないと、これらの権利を使えなくなります。売主が引渡しのときに不適合を知っていたか、重大な過失で知らなかったときは、この1年の制限はかかりません。
これに対して宅建業法では、業者が自ら売主のとき、民法より買主に不利な特約をしてはいけないと決めています。民法と同じ内容や、買主に有利な特約はもちろん有効です。そして例外として、買主が売主に通知する期間を物件の引渡しの日から2年以上とする特約も、してよいとされています。民法の「知った時から」は、いつ終わるかわからない期間です。業法は、期間の数え始めを引渡しの日に決める特約を、2年以上の長さがあるときに限って認めています。
もし民法より買主に不利な特約をしたら、その特約そのものが無効になり、民法の決まり(知った時から1年以内に通知)に戻ります。試験でよく狙われるのは、この無効になった後の扱いです。
- 引渡しの
日から 2年3年など 2年より 長くても よい
- 引渡しの
日から 1年2年より 短い - 契約の
日から 2年引渡しが 後なら 2年未満に なる - 売主は
一切責任を 負わない買主が 同意していても
民法の契約不適合責任や手付の基本ルール(売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れないなど)は、権利関係で整理しておくとさらに解きやすくなります。また、業者が自ら売主として業者でない買主に新築住宅を引き渡すときは、保証金の供託か保険への加入が義務になる別の法律(住宅瑕疵担保履行法)もあります。こちらは住宅瑕疵担保履行法で解説しています。
他人物売買は宅建でどう扱う?
自分の持ち物ではない他人の物件を売ることを「他人物売買」といいます。民法では、他人の物を売る契約もできます(売主がその物を手に入れて買主に移す義務を負います)。しかし宅建業法では、業者が自ら売主で、買主が業者でないとき、自己の所有に属しない宅地・建物(他人の物件や未完成の物件)の売買契約を結んではいけません。本契約だけでなく予約も禁止です。業者が結局その物件をもとの持ち主から手に入れられなかったら、買主はお金を払ったのに家をもらえず困ってしまうからです。
ただし、次の2つの場合は例外として売買契約を結べます。どちらも、買主が物件を受け取れなくなる心配が小さい場合です。
- 業者がその物件を手に入れる契約(予約を含む)を、もとの持ち主とすでに結んでいるとき。ただし、効力の発生に条件が付いた契約(停止条件付き契約)では足りません。たとえば「農地法の許可が下りたら土地を取得する」という条件付きの契約をもとの持ち主と結んでいても、許可が下りないかもしれないので、まだ買主に売ることはできません。
- 未完成物件の売買で、手付金等の保全措置(保証か保険)がとられているとき。
このほか、開発許可の工事の公共施設用地や土地区画整理事業の保留地予定地など、業者が物件を手に入れられることが明らかな場合も例外になりますが、試験では上の2つを押さえておけば十分です。
クーリング・オフ・割賦販売・所有権留保はどんな決まり?
残りの3つの制限も、要点を押さえておきましょう。
クーリング・オフは、業者の事務所など(法律では「事務所等」といいます)以外の場所で買受けの申込みをした買主が、書面で申込みの撤回や契約の解除ができる制度です。クーリング・オフできることを書面で告げられた日から8日たつか、引渡しを受けかつ代金の全部を払うと、もうできません。書面を出した時に効力が生じ、業者は損害賠償や違約金を請求できず、受け取った手付金などを速やかに返します。どこが事務所等に当たるかなどの詳しい決まりは宅建のクーリングオフ|できない場所と8日の数え方で解説しています。
割賦販売とは、代金の全部または一部を、物件の引渡しの後1年以上にわたって、2回以上に分けて受け取る分割払いの売り方です。スマホを分割払いで買うのと同じイメージですが、家の場合は金額が大きいため、次の2つの制限があります。
1つ目は割賦販売の契約の解除等の制限です。買主が分割の支払い(賦払金)を遅れたときでも、業者は直ちに契約を解除できません。30日以上の期間を決めて書面で支払いを催告し、その期間内に払われないときでなければ、契約を解除したり、まだ期限が来ていない残りの分を一括で請求したりできません。これに反する特約は無効です。
2つ目は所有権留保等の禁止です。所有権留保とは、代金を払い終わるまで、売主が登記(所有権)を手元に残しておくことです。割賦販売では、業者は原則として、物件を引き渡すまでに、登記など引渡し以外の売主の義務を果たさなければなりません。ただし、引渡しまでに受け取ったお金が代金の10分の3以下なら、10分の3を超える支払いを受けるまでに登記すればよいとされています。買主が、残りの代金のために抵当権の登記を申請したり保証人を立てたりする見込みがないときは、所有権留保ができます。また、引き渡して10分の3を超える支払いを受けた後は、担保のためにその物件を譲り受けること(譲渡担保)も禁止です。業者が買主のローン(引渡し後1年以上・2回以上に分けて返すもの)を保証したときも、同じ10分の3の決まりがあります。
8種制限は試験でどう出る?
2015〜2025年の本試験13回(宅建業法260問)を自社で分析すると、自ら売主制限(8種制限)を主なテーマとする問題は20問でした。回ごとに見ると、2015年は4問、2016年〜2020年10月は毎回2問、2020年12月は0問、2021年10月以降は毎回1問です。クーリング・オフ(11問)と合わせると13回で31問、1回あたり平均2問あまりです。20問のうち、受験予備校が公表した正答率が80%以上の問題が15問、60〜80%が4問、60%未満が1問でした。基本の数字とひっかけの型で解ける問題が多く、多くの受験生が得点するので、落とすと差がつきます。
選択肢(肢)ごとの出題数を数えると、どこから優先して覚えるべきかがわかります。クーリング・オフ(53肢)は別の分野として数え、ここには入れていません。
圧倒的に多いのが手付金等の保全措置(31肢)です。次に手付の額(11肢)、契約不適合の特約(11肢)、損害賠償額の予定(10肢)、業者間や媒介など8種制限の範囲(8肢)が続きます。問題文では、代金が3,000万円・4,000万円・5,000万円など、2割や5%・10%を計算しやすい額で出されます。宅建業法のほかの分野は、宅建業法とは?何問出る?分野の出題数と勉強法から確かめられます。
試験でよくすり替えられるひっかけを、正しい内容とセットで押さえましょう。
- 売主は
手付を 返せば 解除できる手付の倍額を 現実に 提供する - 保全措置は
受領後に 速やかにとる手付金等を受け取る 前にとる - 2割超の
違約金は 全部が 無効2割を超える 部分だけ無効 - 引渡し1年の
特約は 2年に なる無効で 民法:知った 時から 1年以内に 通知
例題
Q1宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者であるBと宅地の売買契約を締結する場合、代金の2割を超える手付を受領することができる。
Q2宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者ではないBと建築工事完了前の建物の売買契約(代金5,000万円)を締結する場合、手付金等の保全措置を講じずに手付金400万円を受領することができる。
Q3宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者ではないBと建物の売買契約(代金3,000万円)を締結する場合、損害賠償額の予定と違約金を合わせて900万円とする特約を定めたときは、その特約はすべて無効となる。
Q4宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者ではないBと建物の売買契約を締結する場合、種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任について、BがAに通知すべき期間を引渡しの日から2年とする特約は有効である。
Q5宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者ではないBと建物の売買契約を締結する場合、契約不適合責任についてBがAに通知すべき期間を引渡しの日から1年とする特約を定めたときは、その特約は無効となり、通知期間は引渡しの日から2年となる。
Q6宅地建物取引業者Aは、自己の所有に属しない宅地について、農地法の許可を受けることを停止条件として当該宅地を取得する契約を締結している場合、宅地建物取引業者ではないBと自ら売主として売買契約を締結することができる。
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