宅建の報酬計算とは?売買の速算式と賃貸の上限・空家の特例

部屋を借りるときの初期費用の見積もりに、「仲介手数料 家賃1か月分+消費税」と書いてあるのを見たことはありませんか。あの仲介手数料が、宅建業法でいう「報酬」です。
宅建業者が受け取れる報酬には国が決めた上限があり、依頼者が承諾していても上限を1円でも超えて受け取ることはできません。たとえば税抜3,000万円の家を売る仲介なら、上限は消費税込みで105万6,000円です。宅建の報酬の計算問題は、①税抜きの代金(借賃)を出す、②売買は速算式・貸借は1か月分、③売買の代理なら2倍、④最後に消費税を掛ける、の順に当てはめれば解けます。
宅建業法の報酬とは?仲介手数料の上限はだれが決める?
宅建業法でいう報酬とは、宅地や建物の売買・交換・貸借の「媒介」(間に入って契約をまとめること)や「代理」(依頼者に代わって契約を結ぶこと)をしたときに、宅建業者が受け取る仲介手数料のことです。
報酬の上限額は、宅建業法の本文ではなく、国土交通大臣が決めて「告示」(国が公に知らせる文書)で示しています。不動産は何千万円もする高い買い物なので、手数料も大きくなります。不動産のプロである業者に対して、一般の依頼者は手数料の相場を知らないため、国が上限を決めて依頼者を守っているのです。
上限を超えて報酬を受け取ることは、依頼者が承諾していても許されません。違反すると100万円以下の罰金や業務停止処分の対象になります。また、不当に高額の報酬を要求するだけで違反になります。実際に受け取らなくても違反です(ほかの禁止行為は 業務上の規制 でまとめています)。
なお、国が決めているのはあくまで上限です。業者が当然に上限いっぱいを請求できるわけではなく、実際の金額は依頼者と話し合って決めます。上限が105万6,000円の取引を、100万円で引き受けてもかまいません。また、業者は事務所ごとに、見やすい場所へ報酬の額を掲示しなければなりません。案内所には掲示しなくてかまいません。掲示のルールは 事務所・案内所等 で詳しく扱っています。
業者が自分で売主や貸主として取引するときは、仲介ではないためこの報酬の制限はかかりません(売主になるときの決まりは自ら売主制限を解説した 8種制限とは?自ら売主制限の8つと数字・他人物売買 を参照してください)。
売買の報酬はどう計算する?速算式の使い方は?
売買や交換の媒介で、依頼者の一方から受け取れる報酬の上限は、消費税を含まない代金を3つの金額帯に分けて計算します。区切って計算するのは手間なので、試験では合計が一度で出る速算式(区切って足した結果を1つの式にまとめたもの)を使います。
400万円以下400万円超
+2万円代金×3%
+6万円
課税事業者の
たとえば、税抜3,000万円の家を売る媒介を頼まれたとします。代金が400万円を超えているので、速算式に当てはめると、3,000万円×3%+6万円=96万円(税抜)です。業者が消費税の課税事業者なら、最後に1.1を掛けて105万6,000円が売主から受け取れる上限になります。もし買主からも媒介を頼まれていれば、買主からも別に105万6,000円まで受け取れます。
計算するときは、代金から消費税を除く点に気をつけてください。土地の売買には、もともと消費税がかかりません。建物の売買には、売主が課税事業者なら消費税がかかります。たとえば、土地2,000万円と建物1,100万円(消費税10%込み)を、合計3,100万円で売買するとします。建物の税抜価格は1,000万円です。報酬は、土地と合わせた3,000万円をもとに計算します。
また、物件どうしを取り替える交換のときは、2つの物件の価額のうち高い方の金額をもとに同じ式で計算します。
代理だと報酬はいくらになる?
売買や交換の代理を頼まれた業者が依頼者から受け取れる上限は、媒介で計算した額の2倍までです。先ほどの税抜3,000万円の物件なら、96万円×2×1.1=211万2,000円まで代理の依頼者から受け取れます。
ただし、代理の業者が取引の相手方からも報酬を受け取るときでも、依頼者と相手方から受け取る合計が媒介の2倍以内でなければなりません。代理で2倍、相手方の媒介で1倍の合計3倍を受け取ることはできないのです。
1つの取引に複数の業者がかかわるときも、考え方は同じです。たとえば税抜3,000万円の売買で、業者Aが売主の代理、業者Bが買主の媒介をしたとします。このとき、業者Bは買主から媒介の上限である105万6,000円までしか受け取れず、かつAとBが受け取る報酬の合計も211万2,000円以内に収める必要があります。
消費税はどう扱う?(課税事業者と免税事業者)
宅建業者が受け取れる消費税の上乗せ分は、その業者が「課税事業者」(消費税を国に納める業者)か、「免税事業者」(規模が小さく、消費税を納めなくてよい業者)かで変わります。
課税事業者なら、税抜の報酬額に1.1を掛けた額が上限です。一方、免税事業者なら、仕入れにかかった消費税の分として4%までしか上乗せできず、税抜の報酬額に1.04を掛けた額が上限になります。税抜3,000万円の媒介なら、96万円×1.04=99万8,400円が免税事業者の上限です。この4%は報酬の一部で、消費税として別にもらうものではありません。
賃貸(貸借)の仲介手数料の上限は?
アパートや店舗などの貸借の媒介では、貸主と借主の双方から受け取る合計が借賃の1か月分×1.1以内(課税事業者の場合)と決まっています。売買と違って、貸借では代理をしても上限は2倍にならず、媒介と同じく合計で借賃の1か月分×1.1以内です。
ここで一番よく問われるのが、借りる建物が「居住用建物」(もっぱら住むための建物)か、それ以外(店舗・事務所・宅地など)かによる違いです。
(依頼時の
(片方から
居住用建物の賃貸借の媒介では、媒介の依頼を受けるときに承諾を得ていない限り、依頼者の一方からは借賃の0.55か月分(税抜0.5か月分)までしか受け取れません。たとえば家賃10万円(税抜)のマンションを借りるとき、承諾がなければ借主が払う仲介手数料は5万5,000円までです。依頼を受けるときに借主が承諾していれば、借主から11万円を受け取れますが、その場合は合計の上限に達するため貸主からは1円も受け取れません。なお、店舗兼住宅のように住む以外の用途を兼ねる建物は、居住用建物には入りません。
一方、居住用建物以外の賃貸借には、権利金を使う特例があります。「権利金」とは、権利を設定する対価として払い、契約が終わっても返ってこないお金です。礼金なども、名前に関係なく権利金に当たります。権利金のやり取りがあるときは、権利金の税抜額を売買の代金とみなして、速算式で計算できます。借賃1か月分の計算と比べて、多い方を上限にできるのです。
たとえば、家賃20万円・権利金300万円(ともに税抜)の店舗の媒介で、貸主と借主の双方から頼まれたとします。借賃で計算すると、双方の合計で20万円×1.1=22万円までです。権利金300万円で計算すると、(300万円×4%+2万円)×1.1=15万4,000円が一方からの上限となり、双方から受け取れば合計30万8,000円まで受け取れます。比べて多い方の30万8,000円が上限になります。
低廉な空家等・長期の空家等の特例とは?
田舎の実家を300万円で売りたいと思っても、ふだんの速算式だと業者の報酬は上限15万4,000円にしかなりません。現地が遠くて調査の手間がかかるのに報酬が少ないと、不動産会社が仲介を引き受けたがらず、空き家が増えてしまいます。そこで2024年7月1日から、空き家などの取引を進めるために、売買の特例が広がり、貸借の特例が新しくできました。
(使用中かも
または
(代理は
(代理も
1つ目は、低廉な空家等の売買・交換の特例です。税抜きの代金が800万円以下の宅地や建物なら、空き家かどうかに関係なく、依頼者の一方から33万円(税抜30万円×1.1)まで受け取れます。売主だけでなく買主からも、それぞれ33万円まで受け取ることができ、代理なら2倍の66万円までとなります。2024年6月までは、400万円以下・19万8,000円(税抜18万円)・売主からだけというルールでした。古い数字で書かれた過去問の解説には注意してください。
2つ目は、長期の空家等の貸借の特例です。長期の空家等とは、長い間使われていない、またはこれからも使われる見込みがない宅地や建物のことです。たとえば、1年を超えて人が住んでいない空き家が当たります。これを貸すときは、貸主と借主の合計で借賃の2.2か月分(税込)まで受け取れます。ただし、ふだんの上限を超えて多く受け取れるのは貸主からだけです。借主から受け取れる額は、ふだんどおりの上限(居住用で承諾がなければ0.55か月分、承諾があっても1.1か月分)を超えることはできません。なお、入居者を募集中の賃貸アパートの空き室はこの特例の対象にはなりません。
どちらの特例を使う場合も、媒介契約を結ぶときに、前もって依頼者に報酬額を説明して合意しておく必要があります(媒介契約のルール自体は 媒介契約とは?一般・専任・専属専任の違いと試験の数字 で詳しく解説しています)。
報酬とは別に受け取れる費用は?
スマホの契約でも、基本料金とは別にオプション代がかかることがあります。宅建の報酬でも、原則として広告費や調査費はすべて仲介手数料の中に含まれますが、依頼者から特別な頼まれごとをしたときだけは別料金を受け取れます。
仲介(媒介)に関して、報酬とは別に受け取れるのは、次の2つだけです。
- 依頼者の依頼によって行った広告の料金
- 依頼者の特別の依頼によって行う遠隔地での現地調査や空き家の特別な調査などの実費で、前もって依頼者が負担を承諾しているもの
反対に、依頼者に頼まれずに業者が自分の判断で出した広告の料金は、たとえその広告のおかげで契約が決まったとしても請求できません。また、物件の案内料、申込料、建物状況調査(インスペクション)の業者をあっせんした料金も、通常の仲介の仕事に含まれるため別に受け取ることはできません。これとは別の話として、空き家の管理や相続の相談などを、仲介とは別の契約として書面などで結んで行うことがあります。この料金は、仲介の報酬ではないので、そもそも報酬の制限の対象外です。
宅建試験の報酬の計算問題はどう解く?
2015〜2025年の13回の試験で、報酬の問題は14問(ほぼ毎年1問)出ています。受験予備校が公表した正答率で見ると、14問のうち6問が60%未満でした。宅建業法とは?何問出る?分野の出題数と勉強法 の分野の中でも、正答率の低い問題の割合が高い分野です。正答率の低い問題には、権利金と借賃の比較、居住用の承諾の時期、税込みと税抜きの区別を問うものが多くあります。
出題がいちばん多いのは貸借の報酬(居住用の0.55か月・権利金)で13回すべてで問われており、次に広告料などの費用や報酬の原則、その次に空家等の特例が続きます。覚える順番は、①貸借(居住用の0.5か月分・権利金は居住用以外だけ)、②広告料などの別の費用と上限の原則、③売買の速算式と代理の2倍、④空家等の特例です。免税事業者の1.04は、問題文に免税事業者が出たときに思い出せれば十分です。
本番で計算ミスや読み落としを防ぐために、次の手順で順番に数字を出してください。
- 取引の種類を確かめる:売買・交換か、貸借か。媒介か、代理かを見る。
- 業者の消費税区分を確かめる:課税事業者(×1.1)か、免税事業者(×1.04)かに印をつける。
- 税抜きの代金・借賃を出す:建物の代金に消費税が入っていれば割り戻して除く(土地には消費税がない)。
- 基本の税抜額を出す:売買は速算式(400万円超なら×3%+6万円)。貸借は借賃の1か月分(居住用は承諾がなければ一方から0.5か月分)。居住用以外で権利金があれば、速算式の額と比べて多い方を採る。
- 代理・複数業者を調整する:売買の代理なら2倍(相手方からも受け取るなら合計で2倍まで)。貸借の代理は1倍のまま。
- 空家等の特例を確かめる:800万円以下の売買(一方から税抜30万円まで)や、長期の空家等の貸借(合計で税抜の借賃2か月分まで・上乗せは貸主だけ)に当たるかを見る。
- 最後に消費税を掛ける:途中の段階で掛けず、最後に1回だけ1.1(または1.04)を掛ける。33万円や2.2か月分は、すでに消費税込みの数字なので、さらに1.1を掛けない。
- 依頼者の
承諾が あれば 上限を 超えて よい承諾が あっても 上限超えは 違反 - 居住用でも
権利金を 代金と みなせる権利金の 特例は 居住用以外だけ - 返還される
保証金も 権利金で 計算できる返ってくる お金は 権利金に 不算入 - 居住用の
承諾は 報酬受領時までに 得ればよい媒介の 依頼を 受ける ときの 承諾が 必要
例題
Q1消費税の課税事業者である宅建業者Aが、売主から税抜3,000万円の宅地の売買の媒介を依頼された場合、Aが売主から受け取れる報酬の上限は105万6,000円である。
Q2課税事業者である宅建業者Aが、税抜3,000万円の建物の売買について、売主からは代理を、買主からは媒介を依頼された場合、Aは売主から211万2,000円、買主から105万6,000円の合計316万8,000円を報酬として受け取ることができる。
Q3課税事業者である宅建業者Aが、貸主と借主の双方から居住用建物の賃貸借(1か月分の借賃10万円・税抜)の媒介を依頼された場合、媒介の依頼を受けるときに借主の承諾を得ていなくても、契約成立時に借主が承諾すれば、借主から11万円の報酬を受け取ることができる。
Q4課税事業者である宅建業者Aが、店舗用建物の賃貸借(1か月分の借賃20万円、権利金300万円・いずれも税抜、権利金は返還されないもの)の媒介を貸主・借主の双方から依頼された場合、Aが双方から受け取れる報酬の合計の上限は30万8,000円である。
Q5課税事業者である宅建業者Aが、税抜300万円の空き家の売買の媒介を買主から依頼された場合、媒介契約の締結に際しあらかじめ買主に説明し合意していれば、Aは買主から33万円の報酬を受け取ることができる。
Q6宅建業者Aが売主の依頼によらずに独自の判断で新聞折込広告を行い、その広告を見て来店した買主との間で売買契約が成立した場合、Aは売主に対して報酬とは別にその広告料金を請求することができる。
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