37条書面とは?記載事項・交付の相手と35条書面との違い

37条書面とは、不動産の契約が成立した後に、決まった契約の内容を書いて当事者に渡す書面です。部屋を借りるときに、重要事項の説明を聞いて契約した後に受け取る契約書を思い浮かべてください。あの契約書の役目を果たすのが37条書面です。
この記事で押さえるべき結論は、37条書面は契約の後に契約の当事者へ渡し、宅建士は記名するだけで説明は要らないということです。試験では、いつ・だれに渡すかというルールと、必ず書くこと・定めがあるときだけ書くことの区別がくり返し問われます。どれも契約の後で言った言わないのもめごとを防ぐための書面だと考えれば、丸暗記しなくても解けるようになります。
37条書面とは?なぜ必要?
37条書面は、契約で決まった内容を紙に残して確認するための書面で、「契約書面」とも呼ばれます。試験や実務では、決まりが書かれた条文の番号をとって37条書面と呼びます。
37条書面に書くべきことがすべて入り、宅建士が記名した契約書なら、その契約書を37条書面として渡せます。そのため、実際の不動産取引では、契約書を渡すことで37条書面の交付を済ませることが多くなっています。もし宅建業者がこの書面を渡さなかったり、書くべきことを書かなかったりすると、業務停止などの監督処分や、50万円以下の罰金の対象になります。
なぜこのような書面が必要なのでしょうか。たとえば家を買うとき、口約束だけで「引渡しは3月末」「代金は2回に分けて払う」と決めたとします。すると後から「4月末と言ったはずだ」と、言った言わないのトラブルになりかねません。不動産の契約は金額が大きく、決めることもたくさんあります。あとからもめるのを防ぐために、決まった契約の内容を書面にして、契約の当事者に渡すルールになっています。
37条書面はいつ・だれに交付する?
37条書面を渡す時期や相手、宅建士の役割にははっきりした決まりがあります。まずは基本の4つのポイントを見てみましょう。
渡す時期は、契約が成立した後です。売買・交換は、法律に遅滞なく(ぐずぐずせずに)交付すると書かれています。貸借の決まりにこの言葉はありませんが、契約が成立した後に渡す点は同じです。試験で問われるのは、契約の前か後かです。契約の前に渡すのは重要事項説明書(35条書面)です。また、交付する場所にとくに決まりはありません。
だれに渡すかは、宅建業者がどのような立場で契約にかかわったかによって変わります。契約の内容を後から確かめるための書面なので、契約した人がそれぞれ手元に持てるように渡します。
たとえば、業者が自ら買主なら売主に渡します。売主の代理人なら、買主と、代理を頼んだ売主の両方に渡します。媒介(仲介)なら、売買では売主と買主、貸借では貸主と借主の両方に渡します。
ここで注意したいのが、契約の相手や当事者が宅建業者でも省略できないという点です。プロどうしの取引であっても、契約書を作らないと後からもめるのは同じだからです。相手が「控えは要らない」と言って承諾していても、交付を省くことはできません。また、売主の業者と媒介の業者のように1つの取引に複数の業者がかかわるときは、それぞれの業者が37条書面を交付する義務を負います。
例外として、大家さんが自分でマンションの部屋を貸すような「自ら貸主」になるケースでは、37条書面を渡す義務はありません。そもそも自ら貸主として部屋を貸すことは宅建業の取引に当たらないため、重要事項説明の義務も37条書面の義務もかからないからです。宅建業者が自ら貸主になる場合も同じです。なお、貸借の契約であっても、間に入って媒介や代理をした宅建業者には37条書面を渡す義務があります。自ら貸主が宅建業に当たらない仕組みは、宅建業の意味や免許の要否をまとめた宅建業の意味・免許の要否で詳しく確認できます。
宅建士がすること・しなくていいこと
37条書面で宅建士がしなければならないのは、書面への宅建士の記名だけです。2022年5月の法改正で押印は廃止されたため、ハンコは要りません。記名する宅建士は、その事務所の専任の宅建士でなくてよく、35条書面に記名して説明した宅建士と別の人でもかまいません。複数の業者が取引にかかわるときは、それぞれの業者の宅建士が記名します。媒介業者の宅建士が記名したからといって、売主業者の宅建士の記名を省くことはできません。
一方で、37条書面は宅建士が説明しなくてよいですし、宅建士が自分で手渡す必要もありません。宅建士ではない一般の社員が渡してもルール違反にはなりません。37条書面で宅建士に求められているのは記名だけなので、渡す人には決まりがないのです。また、渡すときに宅建士証を見せる義務もありませんが、取引の関係者から「宅建士証を見せてほしい」と請求されたときは見せなければなりません。宅建士証の提示ルールや宅建士だけができる仕事については、宅地建物取引士もあわせて読んでおくと整理しやすくなります。
電磁的方法(PDF などで渡す)
スマホを契約した後に、契約内容の控えを紙ではなくメールや PDF で受け取ることがあります。同じように37条書面も、交付する相手の承諾を得れば、紙の代わりに電子データ(「電磁的方法」といいます)で提供できます。電子データで提供すれば、書面を交付したものとみなされるため、後から紙の書面を渡す必要はありません。
承諾を得る前には、メールやダウンロードなどどの方法で送るかと、ファイルの形式を相手に示し、書面や電子的な方法で承諾をもらいます。口約束だけでは足りません。また、いったん承諾した後で相手が「やはり電子データでは受け取らない」と申し出たときは、もう一度承諾を得ない限り電子データでは送れなくなります。
送る電子データの主な条件は次の3つです。
- 相手が紙に印刷して書面にできること
- データが途中で書き換えられていないか確かめられること
- 記名する宅建士がだれか画面や書面でわかること(紙の記名の代わり)
37条書面の記載事項は?必ず書くことと定めがあれば書くことの違いは?
37条書面の記載事項は、どんな契約でも必ず書く「必要的記載事項」と、特約などのルールを決めたときだけ書く「任意的記載事項」の2つに分かれます。また、売買(交換)と貸借でも書く内容が違います。
まず、売買や交換で必ず書くこと(必要的記載事項)は6つあります。たとえばAさんが中古の一戸建てを買う場面を想像してみてください。だれが(当事者の氏名・住所)、どの家を(所在や構造など物件を特定する表示)、いくらで・いつ・どうやって払うか(代金や交換差金の額・支払時期・方法)、いつ鍵を渡すか(引渡しの時期)、いつ名義を変える手続きをするか(移転登記の申請の時期)の5つは、どの売買でも必ず決めることです。これに加えて、中古の建物(「既存の建物」といいます)の売買・交換では、基礎や柱・壁など建物を支える部分や、屋根・外壁など雨水を防ぐ部分の状況について、当事者の双方が確認した事項も必ず書きます。建物状況調査などの結果を説明したうえで契約したときはその概要を書き、それ以外のときは原則として「無」と書きます。
次に、定めがあるときだけ書くこと(任意的記載事項)は、当事者の間で「こうしよう」と特約を決めたときにだけ書くものです。決めなければ37条書面に書く必要はなく、「定めがない」とわざわざ書く必要もありません。
たとえばAさんの売買で、手付金など代金以外のお金をやり取りするなら、その額や授受の時期・目的を書きます。また、契約の解除の条件や、約束を破ったときの損害賠償額の予定・違約金を決めたときも記載します。さらに、住宅ローン(代金についての金銭の貸借のあっせん)が通らなかったときに契約を白紙に戻すといった措置、引渡し前に地震などの天災その他不可抗力で建物が壊れたときの損害の負担、雨漏りなど種類や品質が契約に合わないときの「契約不適合責任」や保証保険などの措置、固定資産税などの税金(「租税その他の公課」といいます)をどちらが負担するかについても、取り決めをしたときはすべて書面に残します。なお、業者が自ら売主になるときに手付金や契約不適合責任のルールがどう制限されるかは、8種制限とは?自ら売主制限の8つと数字・他人物売買で詳しく扱っています。
売買と貸借で何が違う?
部屋や土地を借りる貸借の契約では、必ず書くことは、当事者の氏名・住所、物件を特定する表示、借賃(家賃)の額・支払いの時期と方法、引渡しの時期の4つだけです。また、定めがあるときだけ書くことも、敷金や礼金など借賃以外のお金の額・授受の時期・目的、契約の解除、損害賠償額の予定・違約金、天災その他不可抗力による損害の負担の4つに絞られます。
逆に言うと、移転登記の申請の時期、既存の建物の確認事項、ローンが成立しないときの措置、契約不適合責任、租税公課の負担の5つは、貸借では要りません。
なぜこれらが貸借で要らないのかというと、部屋を借りるだけでは物件の持ち主が変わらないからです。持ち主が変わらないので所有権の移転登記はしませんし、固定資産税などの税金も持ち主である大家さんが払うままで、借主と負担を分ける話になりません。また、家賃のために住宅ローンを組むこともなく、建物を買い取るわけではないので、契約不適合責任や中古建物の構造確認も37条書面の記載事項から外れています。
35条書面と37条書面の違いは?
試験でとてもよく狙われるのが、重要事項説明書(35条書面)と37条書面の入れ替えひっかけです。2つの書面の違いを、次の図で比べてみましょう。
37条書面は、
2つの書面で書く中身が違うのも、それぞれの目的が違うからです。35条書面は「この物件を買っても(借りても)大丈夫か」を契約の前に判断するための書面なので、抵当権などの登記された権利、法令上の制限、私道負担、マンションのペット禁止といった規約、手付金等の保全措置の概要などを書きます。これらは契約の後で渡す37条書面には書きません。35条書面に書く詳しい中身は、重要事項説明(35条書面)とは?宅建の4つの決まりと記載事項で確認してください。
反対に、代金・借賃の額や支払時期、引渡しの時期、移転登記の申請時期、天災の損害負担、租税公課の負担、既存建物の当事者双方の確認事項は、ふつうの売買・貸借では37条書面だけに書くことです。いくらで買うか、いつ引き渡すかといった条件は、契約がまとまって初めて決まることだからです。
なお、手付金など代金以外のお金、契約の解除、損害賠償額の予定・違約金、ローン、契約不適合責任の措置などは、35条書面にも37条書面にも登場します。35条書面で重要事項として説明したことでも、37条書面の記載事項に当たるなら、省略せずに37条書面にも書かなければなりません。
37条書面は宅建試験でどう出る?
2015年から2025年までの13回で出た宅建業法の問題(260問)を分析すると、37条書面からは合計27問が出題されています。これは宅建業法の中で、重要事項説明の36問に次いで2番目に多い出題数です。13回すべての試験で1〜3問(毎年平均して2問前後)が欠かさず出ており、問26〜問44のあちこちに出ます(問37・問40が各3回)。宅建業法全体の出題傾向や勉強の進め方は、宅建業法とは?何問出る?分野の出題数と勉強法にまとめています。
出題された27問のうち、受験予備校のデータで正答率が80%以上だった基本問題が15問、60〜80%が8問を占めます。多くの受験生が得点する分野なので、ここで落とすと差がつきます。過去13回の選択肢(肢)を数えると、多く出ているのは次の順番です。
- 定めがあるときだけ書くこと(任意的記載事項):32肢(13回すべてで出題)
- 必ず書くこと(必要的記載事項):25肢
- 35条書面との比較:24肢
- 記名・交付の方法:21肢
- 交付の相手:20肢
- 電磁的方法:10肢
勉強するときは、まず毎年のように出る、いつ・だれに渡すかと宅建士は記名だけという基本を固めます。次に、必ず書くことと定めがあるときだけ書くことの区別、売買と貸借の違い、35条書面との違いを覚え、最後に電磁的方法を押さえましょう。とくに2018年と2024年には、「必ず記載しなければならない事項の組合せ」を選ぶ問題も出ています。
試験でくり返し出る代表的なひっかけを4つ確認しておきましょう。
- 宅建士が
内容を 説明する記名だけで 説明は 不要 - 相手が
業者なら 交付不要業者間でも 必ず 交付する - 定めが
ない 旨を 記載する定めが なければ 書かない - 貸借も
移転登記時期を 書く貸借では 登記時期は 不要
このほかにも、「37条書面は宅建士が交付しなければならない(正しくは、宅建士でない従業者が渡してもよい)」「引渡しの時期か移転登記の申請時期のどちらかを書けばよい(正しくは、両方とも必ず書く)」といったひっかけが定番です。最後に、本番に近い形の例題で知識を確かめてみましょう。
例題
Q1宅建業者が不動産売買の媒介を行う場合、37条書面は買主に交付すれば足り、売主に交付する必要はない。
Q237条書面には宅建士が記名しなければならないが、その宅建士は専任の宅建士でなくてもよく、また37条書面の内容を宅建士が説明する必要もない。
Q3宅建業者どうしが宅地の売買契約を締結した場合、買主が宅建業者であるため、売主である宅建業者は37条書面の交付を省略することができる。
Q4建物の売買契約において、損害賠償額の予定または違約金に関する定めをしなかった場合、37条書面に「定めがない」旨を記載しなければならない。
Q5建物の貸借の媒介において、天災その他不可抗力による損害の負担に関する定めがあるときは、その内容を37条書面に記載しなければならないが、移転登記の申請の時期は記載しなくてよい。
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