重要事項説明(35条書面)とは?宅建の4つの決まりと記載事項

部屋を借りるとき、不動産会社で宅建士証というカードを見せられ、分厚い書類を長々と読み上げられた経験はないでしょうか。あれが宅建試験で毎年出る重要事項説明(略して「重説」)です。
重要事項説明とは、契約する前に、宅建士が、買う人・借りる人に、35条書面を渡して説明する決まりです。試験では、この4点のひっかけと、売買と貸借での35条書面の記載事項の違いがくり返し問われます。4つの基本は、なぜその決まりがあるのかがわかれば、丸暗記しなくても解けます。
重要事項説明(35条書面)とは?
重要事項説明とは、不動産を契約する前に、物件の大事な情報や契約の条件をお客さんに伝える手続きです。このときに使う重要事項説明書のことを、宅建の試験では35条書面と呼びます。
たとえば家を買ったあとに「家の前の道は他人の私道で、通るのにお金がかかる」「土砂災害の警戒区域に入っていた」と知ったら大変です。契約したあとでは、簡単にはやめられません。不動産のプロである宅建業者と、プロではないお客さんとの間には、持っている情報に大きな差があります。買主や借主が納得して契約できるように、手遅れになる前に大事なことを知らせるのが35条書面の役割です。
重要事項説明はだれが・いつ・だれに説明する?
重要事項説明のルールは、不動産を手に入れる人を守るためにあります。この目的から考えると、だれが・いつ・だれに・どうやって説明するかの4つの決まりが自然とわかります。
- 専任の
宅建士でなければならない宅建士なら 専任でなくてよい - 契約成立後、
遅滞なく 説明する契約が 成立するまでに 説明する - 売主や
貸主にも 説明する説明するのは 買主・借主だけ - 求められた
ときだけ宅建士証を 見せる求められなくても 必ず 見せる
どのひっかけも、手に入れる人を守るという目的から見破れます。大事なのは宅建士の資格で、会社での勤め方は関係ないので、専任でなくてかまいません。契約したあとに悪い情報を知っても手遅れなので、説明は契約が成立するまでにします。物件の情報を知らずに損をするのはこれから手に入れる側なので、説明の相手は買主・借主だけです(交換の相手方も含みます)。宅建士証を見せるのは、資格を持つ本人が説明していると相手が確かめられるようにするためです。
重要事項説明をする義務を負うのは宅建業者ですが、実際に説明するのは宅地建物取引士(宅建士)です。35条書面には宅建士の記名が要りますが、ハンコ(押印)は要りません。書面に記名する宅建士と、当日説明する宅建士は別の人でもかまいません。宅建士の仕事や資格のルールは宅地建物取引士で詳しく解説しています。
説明する場所に決まりはありません。会社の事務所でなくても、喫茶店や相手の自宅でもできます。また、売主である業者と、間に入る仲介(媒介)の業者の2社がかかわるときは、両方の業者に重要事項説明の義務があり、それぞれの宅建士が35条書面に記名します。相手が「詳しいから説明はいらない」と言っても、説明を省くことはできません。
IT重説(オンラインの重要事項説明)の条件は?
パソコンやスマホのテレビ会議を使えば、対面と同じようにオンラインで重要事項説明ができます(IT重説)。売買でも貸借でも利用できます。
条件は、映像と音声を双方向でやりとりできることです。画面越しに宅建士証を映して相手が見えたことを確かめるため、音声だけの電話ではIT重説はできません。また、35条書面は説明する前にあらかじめ相手へ送っておく必要があります。相手の承諾があれば、紙の書面に代えてPDFなどの電子データで渡すこともできます。
相手が宅建業者のときはどうなる?
買主や借主が宅建業者であるときは、35条書面を交付するだけでよく、説明は要りません。相手も不動産のプロなので、書面を読めば自分で内容がわかるからです。宅建士証を見せる決まりも、説明がないのでかかりません。
35条書面の記載事項は?売買と貸借で何が違う?
35条書面の記載事項(書面に書いて説明する内容)は数が多いため、全部を丸暗記する必要はありません。試験で狙われるのは、建物の貸借では要らないものと貸借だけで説明することの区別です。
部屋を借りる場面を思い浮かべてください。マンションの1室を借りる人は、その建物を壊して建て替えることはありません。だから、建て替えるときに関係するルールや、土地の持ち主が負担する私道のルールは、建物の貸借では説明しなくてよいのです。
物件の基本と、建物の貸借では要らないもの
物件そのものに関する決まりは、買う人にも借りる人にも関わるものが多いですが、建物の貸借だけ外れる項目が試験の定番です。
登記された権利の種類・内容・名義人は、売買でも貸借でも説明します。物件に抵当権(ローンの担保)がついているなら、引渡しまでに消す予定であっても説明しなければなりません。水道・電気・ガス・排水の整備状況や、未完成物件の完成時の形・構造も、売買・貸借ともに説明します。
一方で、都市計画法や建築基準法などの法令上の制限は、建物の貸借ではほとんど要りません(建蔽率・容積率・用途地域などは不要)。私道に関する負担も、建物の貸借では要りません。なお、同じ貸借でも土地を借りる宅地の貸借では、土地を借りて建物を建てることがあるため、法令上の制限も私道負担も説明します。また、新築住宅が住宅性能評価を受けていれば、そのことを建物の売買だけで説明します。貸借では要りません。
災害や建物の安全性については、売買でも貸借でも説明します。物件が造成宅地防災区域・土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域の中にあるか、また水害ハザードマップ(洪水・雨水出水(内水)・高潮)に物件の位置が表示されていればその位置を説明します。ハザードマップは図面を渡すだけでは足りず、物件の位置を示して説明しなければなりません。
建物の石綿(アスベスト)の調査記録や、1981年(昭和56年)5月31日以前に着工した建物の耐震診断の内容も、建物の売買・貸借の両方で説明します。ただし、記録や診断結果があれば説明するだけで、宅建業者がわざわざ調査や診断をする義務はありません。
お金と契約の条件に関する記載事項
お金のトラブルを防ぐための項目は、売買でも貸借でも説明します。代金や家賃以外に払うお金(手付金・敷金・礼金など)の額と目的、契約の解除のルール、損害賠償額の予定や違約金については、必ず説明します。
売買でよく出るのが、宅建業者が自ら売主になるときの手付金等の保全措置の概要や、欠陥があったときの責任(契約不適合責任)を果たすための保証保険などの措置をとるかどうかです。このあたりは8種制限とは?自ら売主制限の8つと数字・他人物売買とあわせて学ぶと理解が深まります。また、ローンのあっせん(紹介)をするときは、その内容と、万が一ローンが通らなかったときに契約をどうするかも説明します。
マンション・中古建物・貸借だけの記載事項
分譲マンション(区分所有建物)の売買では、マンションならではの項目を幅広く説明します。敷地の権利、共用部分の規約、ペット禁止などの専有部分の用途制限の規約、専用使用権の規約などです。お金と管理では、管理費、修繕積立金の規約とすでに積み立てられている額、管理の委託先、維持修繕の実施状況の記録などを説明します。2026年4月からは、マンション管理業者が管理組合の管理者になっている方式なら、そのことも売買で説明します。
これに対して、マンション特有の項目のうち、貸借で説明するのは専有部分の用途制限の規約と管理の委託先の2つだけです。部屋のオーナーが払う修繕積立金は、部屋を借りる人には関係ないからです。登記された権利や設備などの共通の項目は、マンションの貸借でももちろん説明します。
中古の建物(既存建物)では、1年以内(鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅などは2年以内)に建物状況調査(インスペクション)を実施しているかと、実施していればその結果の概要を、売買・貸借の両方で説明します。一方、設計図書や検査済証といった書類の保存状況は、売買だけで説明し、貸借では要りません。
反対に、貸借だけで説明する項目もあります。アパートを借りるときに気になる次の項目です。
- 台所・浴室・トイレなどの設備の整備状況(建物の貸借)
- 契約期間と更新のルール、定期借地権や定期建物賃貸借・終身建物賃貸借である旨
- 退去するときに返す敷金などのお金の精算のしかた
- 用途などの利用の制限と、管理の委託先(宅地・建物の貸借)
- 契約が終わったときの建物の取壊し(宅地の貸借)
35条書面と37条書面はどう違う?
宅建業法には、35条書面とよく似た37条書面(契約の内容を書いた書面)があります。35条書面は、契約の前に、買うか借りるかを決めるための説明書です。37条書面は、契約が成立したあとに、決まった内容を書いて渡す書面です。ふだんは契約書が37条書面を兼ねています。部屋を借りるなら、契約前にもらう分厚い説明書が35条書面、契約のときにサインする契約書が37条書面です。
35条書面は
37条書面は宅建業法の分野で2番目に多い27問が出ていて、2つを比べる問題もよく出ます。詳しくは37条書面とは?記載事項・交付の相手と35条書面との違いで解説しています。
重要事項説明は宅建試験でどう出る?
2015年から2025年までの13回で出た宅建業法の問題(260問)を分析すると、重要事項説明からは36問出ています。13回すべてで出ていて、1回あたり平均で約3問(多い回は5問)です。宅建業法とは?何問出る?分野の出題数と勉強法のすべての分野の中で出題数が1位です。36問のうち20問は、受験予備校が公表した正答率が80%以上でした。多くの受験生が得点する分野なので、落とすと差がつきます。
勉強するときは、次の順番で覚えると効率的です。
- だれが・いつ・だれに・どうやって説明するかの基本ルール(13回すべての試験で出題)
- 建物の貸借では要らないもの(法令上の制限・私道負担)と、貸借だけの記載事項
- マンション(区分所有建物)の売買と貸借の違い、中古建物(インスペクション)のルール
- 代金以外のお金・解除などの取引の条件と、災害区域・水害ハザードマップ・石綿・耐震診断のルール
4つの基本のひっかけは上の図のとおりです。記載事項でよく出るひっかけも、正しいルールとセットで覚えておきます。
- 抹消予定の
抵当権は 不要消す予定でも 説明する - 業者が
耐震診断・石綿調査を する記録が あれば 説明する だけ - ハザードマップは
渡すだけ物件の 位置を 示して 説明する
例題
Q1宅建業者は、重要事項の説明を、事務所ごとに置かれる専任の宅建士にさせなければならない。
Q2宅建業者が建物の売買の媒介を行う場合、買主だけでなく売主に対しても、契約が成立するまでの間に35条書面を交付して説明しなければならない。
Q3建物の貸借の媒介を行う宅建業者は、当該建物の敷地に関する私道負担について、借主に重要事項として説明しなければならない。
Q4建物の売買において、買主が宅建業者である場合、売主である宅建業者は、宅建士が記名した35条書面を交付すれば、宅建士による説明を省略することができる。
Q5宅建業者は、建物の売買の媒介にあたり、売買契約が成立した後、遅滞なく、買主に重要事項を説明しなければならない。
Q6重要事項の説明は、映像と音声を双方向でやりとりできるテレビ会議の方法で行うことができる。
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